秋から冬 登山の注意点

先日那須で4人の方が亡くなる遭難事故がありました。全員が低体温症で亡くなったものと思われます。夏山登山の場合はそれほど心配はいりませんが、秋から冬にかけては注意が必要です。山から生きて帰るために、以下の点に気をつけたいです。

1 天候の変化

秋から冬にかけては「寒気の流入」や「低気圧の発達による冬型の気圧配置」に気を付けなければなりません。体がまだ寒さになれていないことと、ついつい夏山のつもりで装備がおろそかになることが原因だと思います。冬型が強くなるという天気予報での秋の登山においては「中止」や「日程を変える」「行く山を変える」などが必要です。
今回の遭難については、登山の日を2日後ろにずらすことで安全で楽しい登山になったはずです。
また、那須は「強風で有名」ですので、別の山域、たとえば里山を歩くなどの山行に変更するのがよかったでしょう。

2 服装と装備

「0℃前後の気温と風雨」に耐えうるには、

  • 防水性が高く透湿性のある高性能な雨具
  • ぬれても保温性の高い下着や中間着
  • 防水性、保温性の高い手袋
  • アルミ温熱シート
  • 目出し帽(バラクラバ)
  • ポットに入れた暖かい飲み物
  • ガスコンロなどの熱源
  • いざというときのツェルトとその使い方
  • 低体温症に対する知識
  • 風を避けるビバーク地点を見きわめる能力

が必要です。

このすべてを携行するとある程度の重さ(10kg)になります。つまり、「10kgを背負って、冷たい雨と強風などの悪条件の中を登る体力と技術」を持ち合わせていない登山者は事故になってしまう可能性が高いということです。


以上1・2の条件がそろって初めて「秋から冬への登山」に出かけるスタートラインにつけると思うのです。

天気のいい日に山を登ることは気持ちいいですね。ましてや夏を過ぎて秋空の下、山を歩く楽しみと言ったら言葉にできないくらいすばらしいものです。こんな秋山においては危険や自分たちの遭難をみじんも感じませんが、「ひとたび天気が悪くなると簡単に人の命を奪ってしまう」ということを肝に銘じなければなりません。

今回の遭難事故は「前日昼の12時過ぎに本人から救助要請」があったものの、警察と消防による救助活動は「風速40mに迫る強風と氷点下の気温」に阻まれ、残念ながら要救助者にたどり着けませんでした。このような状況の中でも警察と消防の方々は命を救出すべく行動してくださいました。また、温泉宿のご主人がご自分の危険を十分知りながらこの活動に参加してくださったことを忘れてはなりません。

今回亡くなられた4名の方の御冥福をお祈りするとともに、今後の私たちの登山に活かしていくことが大切だと考えます。